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 ブランデーの基礎知識



歴史と概要

スピリッツと呼ばれる蒸溜酒は数々あるが、ウイスキーとともに双璧と評されるのがブランデー。果実を原料にしたものだが、なかでもぶどうが主流で、世界屈指のぶどう生産量を誇るフランスが、いうまでもなく世界一の生産国だ。蒸溜アルコールは8~9世紀に中東で造られるようになったとされ、製造法がフランスに伝わったのは13世紀。フランスは当時、紀元前7世紀にすでに醸造され、最も歴史の古い酒であるワインの一大産地だった。医者で錬金術師のアルノー・ド・ヴィルヌーヴが偶然、そのワインを蒸溜したのがブランデー始まりという。ウイスキー同じく、当時は薬用がメインで「命の水」とも呼ばれていたそうだ。

もっとも発祥説はいくつかあり、16世紀に酒類を扱うオランダの貿易商が輸送費軽減のため、ワインを蒸溜することで液体量が減らせ、かつ高い度数の酒になる利点から考案した説、できの悪いワインを蒸溜することで、より旨みのある酒に変えられるからとの説などが流布している。ただし、どの説にしろ、ワインがあってこそのブランデー変わりはない。

その後17世紀後半に、フランス南西部のコニャック地方で本格的に企業化した蒸溜所が登場し、新たな酒類として定着。コニャックが現在、ブランデー代名詞的存在なのは、この歴史からである。ただし、劣らず有名な南仏アルマニャック地方ではさらに古く、15世紀初頭にはブランデー造りが行われていたという記録が残る。ちなみにブランデーの名は、「ヴァンブリュレ」(焼いたワイン)といわれていたものを、オランダの貿易商が自国語の「ブランデウェイン」の名で周辺国に輸出。この頃にはフランスよりも輸入した英国での消費が多く、その英国で言葉を縮めて「ブランデー」と呼んだことが一般に広まったものだ。

産業としての成長をさらに進めるべく、1713年にはルイ14世がブランデーを保護する法律を制定。これがヨーロッパの王室の注目を集め、各国の上流階級でも嗜好されて「王侯の酒」と呼ばれるほどになる。また大航海時代(ヨーロッパ各国がアメリカ大陸インド、アジア諸国へ植民地などを求めて船団を組み進出した)には船上酒としても浸透、訪れた各地にも普及していく。だが当時はまだ無色透明で、今ほどまろやかな酒ではなかったようだ。ウイスキーと同様に樽に詰めて貯蔵し、琥珀色に変化させる熟成の歴史は定かではないが、大航海時代に船に積んだ樽詰めの原酒がその始まりではないかと考えられている。

ところでブランデーワイン(ぶどう)だけでなく、前出のとおり果物類を原料とする蒸溜酒の総称である。フランスに伝わった頃とそれほど変わらない時期に、同様な製法がヨーロッパ一円に伝播。りんご、さくらんぼなど各種の果物が原料に使われている。これらはフルーツブランデーとも呼ばれるが、琥珀色に仕上げるのは東ヨーロッパの製品。西ヨーロッパでは樽熟成されないものが多い。無色透明で商品化されることからホワイトブランデーの名もある。消費量の多い国の一つアメリカのブランデー造りは、1842年にカリフォルニアで始められた。


原料と製法

原料として最も多く使われるのはぶどう。醸造酒のワインを造った後、蒸溜するのが一般的だ。これをグレープブランデーと呼ぶ。このほか、りんごやさくらんぼ、プラム、洋梨、あんず、いちご、木いちご、各種ベリーなど多種多彩な果物を原料とするものはフルーツブランデーと総称される。また、ワイン製造の際に残ったぶどうかすを蒸溜するかす取りブランデーもある。フランスではマール、イタリアではグラッパというが、日本酒の搾りかすを使ったかす取り焼酎と同じように、しっかりした蔵元(蒸溜所)の造るものは評価が高い。さらに原産地呼称統制(AOC)の基準に達しなかったフランスワインを原料とするものがフィーヌと呼ばれる。

これら原料が多岐にわたることから、発酵後の蒸溜方法も原料の特性(酸味、香りなど)を生かすため、単式蒸溜器で数回蒸溜するもの、連続式蒸溜器や半連続式蒸溜器を使うものなどそれぞれ異なる。出荷にもかなり違いがあり、無色透明なホワイトブランデーは、蒸溜後、樽ではなくタンクで味を慣らして瓶詰めする。これは樽の香りがつくのを避け、原料本来の香りを楽しんでもらうため。逆に樽に貯蔵し、年月をかけた後出荷するものは、本来の香りと樽香が醸し出す複雑な味わいに特徴がある。

その熟成の年数を表すのがボトルに表記されたVO、VSOなどの記号。VOは12~15年、VSOは15~20年、VSOPが25~30年、さらにXOが40~45年といわれる。ただしあくまでも目安で、年数が合致しないものもある。

またナポレオンと名づけた銘柄も等級を表すものの一つ。皇帝ナポレオンブランデーを各国に広めた功労者の一人)統治時代の1811年にぶどうが大豊作。良質の酒ができたことから、この後、高品質ブランデー代名詞として用いられるようになったもの。また、多くのブランデーは原酒をブレンドして商品化するが、コニャックは古酒と新酒でブレンドするのが特徴だ。

さて、フランスブランデーが世界に認められて以来、特に名産地として人気を博してきたのがコニャックアルマニャックフランス政府はその品質保持のため、1909年に名称の使用に関して法律で厳しく制限。このことが、両エリアブランド名をさらに高め、現在に至っている。また、それ以外のフランス産はフレンチブランデーと総称される。

本書ではこのコニャックアルマニャックを中心に、フィーヌとマールグラッパを紹介する。またぶどう以外のおもな果実蒸溜酒フルーツブランデー)では、フランスノルマンディー地方のりんごを原料にしたカルヴァドス、さくらんぼを使ったドイツのキルシュワァッサーの銘酒を取り上げた。


【出典】 東京書籍(著:上田 和男)
洋酒手帳

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洋酒手帳について
特徴や味わい、アルコール度数や容量、参考価格などの数値を含め解説。 また原料や製法、歴史などの基礎知識も充実しており、洋酒入門としてお勧め。
この言葉が収録されている辞典

 洋酒手帳


  • 【辞書・辞典名】洋酒手帳[link]
  • 【出版社】東京書籍
  • 【編集委員】上田 和男
  • 【書籍版の価格】1,512
  • 【収録語数】192
  • 【発売日】2011年7月
  • 【ISBN】978-4487804528










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