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 台所役人【だいどころやくにん】



9 将軍様の口に食べ物が入るまで…江戸城台所役人の意外な役得とは?
 にわかには信じがたいが、江戸城内では、将軍とその正室2人のために、毎食100人以上の役人が料理をつくっていた。こうした人々を総称して「台所役人」と呼ぶ。
 調理師の代表が御広敷膳所台所頭で、200石の御家人が任命され、役料は100俵で定員は2名となっている。その下には、御台所人が数十人つく。彼らの身分はとくに問われることがなく、料理の腕が確かなら採用となる。
 将軍の食事を賄う代表が御賄頭で、定員は2~4名、こちらの身分は旗本だが、石高は御広敷膳所台所頭と同じ200石だった。ただ、役料は200俵で、料理を飾りつけるお膳や椀・箸などを主に担当した。やはり、その部下の多くは、身分を問われることがない。
 おもしろいことに、将軍と正室には、まったく同じ食事が10食用意されるのである。
 そのうち2食は、毒味によって消費されるためにつくられる。
 まず、料理ができると、台所役人が1食分を分担して食べる。もしも食事に異物が混入していたり、不都合があったら、台所役人全員の首が飛ぶゆえ、小石などが混ざっていないかと、米粒一つ一つまで調べたというから驚いてしまう。
 しばらくして異常がなければ、残り9食を御膳所という部屋へ持っていく。
 料理はそこで温め直され、御中臈(大奥の女中)によって、そのうち1食が再び毒味されるのである。
 そして、残った8食が将軍と正室のもとへ運ばれる。
 ちなみに、将軍とその正室が食事を共にすることはほとんどなく、たいてい別々の部屋で、それぞれ食べたようだ。
 将軍の前に膳は1つ。残り7食分は隣室に置いておく。殿中は広い。どんな熱い汁物でも、将軍の手元に届く頃にはさめてしまっていたと伝えられる。
 そして、将軍が魚に一箸つけて口に含むと、「お代わり」と側近の者が言い、隣室にある新たな魚と交換する。ただし、これを7回も繰り返したわけではなく、お代わりは1度だけで、それ以上は礼儀にはずれるとされていた。
 可哀想な将軍である。もちろん、これでは腹もいっぱいにならなかったろうから、ご飯は3杯まで食べることができたという。
 いずれにしても、将軍の食事のたびに大量の残飯が出ることになるわけだ。何とも無駄で、もったいない気もするが、そのままゴミとして捨てることはしない。台所役人たちの腹にしっかり収まるのである。
 おいしい思いは、これだけではない。
 毎日毎日、将軍の台所には、全国から新鮮な食材や高価な珍味が山のように入荷される。ところが、こうした素材は極上部分のみが使われるため、残りの大半は使われずに余ってしまうことになる。
 もちろんこれも、無断にはしない。台所役人が捨てずに自宅へ持ち帰り、その食材を使って、弁当をこしらえた。自分用ではない。売るためにである。
 彼らは余った食材でたくさんの弁当をつくり、江戸城内の役人たちに売ったのだ。
 最高の食材を使った、いわば「将軍様の弁当」ゆえ、役人たちは喜んで買ったと言われる。何ともすごい役得である。

【出典】 日本実業出版(著:河合敦)
日本史の雑学事典

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  • 【辞書・辞典名】日本史の雑学事典[link]
  • 【出版社】日本実業出版社
  • 【編集委員】河合敦
  • 【書籍版の価格】1,404
  • 【収録語数】136
  • 【発売日】2002年6月
  • 【ISBN】978-4534034137










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