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 大家【おおや】



5 「ご隠居」では務まらない? 大家という職業…多忙さに見合う高収入で大人気
 江戸時代の長屋の大家というと、隠居した暇な老人というイメージがあり、その仕事も、店子(借家人)の家賃の取り立てと夫婦ゲンカの仲裁といった長閑な役職を思い浮かべてしまう。きっと落語の影響なのだろう。だが、実態はゼンゼン違うのだ。
 江戸の町は、町奉行所の支配を受けていたが、基本的に町役人による自治が広く認められていた。町役人は、その頂点に町年寄(定員3名、世襲制)がおり、その下に町の実力者である町名主、土地を所有する家持(地主)、家持から借家の管理を任されている家主(家守)という序列がある。
 この家主が、俗に言う大家である。つまり、大家は町役人の末端を担う支配者といえるのだ。
 だから、仕事は店子から家賃を集めて家持に支払うだけではない。自身番をしたり、町費を計算・管理したり、店子の住民登録を作成したり、旅行許可証を発行したり、さらに公儀から伝達される町触を町名主から受け取って店子に読み聞かせたり、というように、とても多忙な毎日を送っていたのである。
 それでも江戸の町人は、金さえあれば大家株を手に入れようとした。株の値段は、借家の立地や大きさによって違ったが、平均50両、高価なものになると200両を超えたと言われる。おおざっぱだが、1両5万円と計算しても、1千万円になる。
 多忙なのに、なにゆえ大家は、人気の役職だったのだろうか?
 それはもちろん、とっても役得の多い仕事だったからである。
 まず、定期収入だが、これは店子の家賃のおよそ5%近くが大家の取り分だったと言われている。さらに、長屋への入居を希望する者は、大家のもとへ誓約書を持参するとき、現金2~3両を包み、ご馳走も用意した。そうしないと、大家が家持に取り次いでくれないからである。
 また、大家には、店子の糞尿を自分のものにする権利があった。糞尿は、効果的な肥料になる。そのため、江戸近郊の農家は、糞尿をお金や農産物と交換したのである。
 それから、店子が使用した空樽も、大家に転売権があった。加えて、盆暮れや節句の、店子からの付け届けなどの諸収入を足せば、年間50両から70両程度の収入となる。大家株を購入するために費やしたお金など、たった1~2年で取り戻せてしまうのだ。こうしたところに、大家職の人気があったというわけだ。
 しかも、店子に対する大家の権限は強大だった。落語などにはよく、「大家と言えば親も同然、店子と言えば子も同然」といった親密さを強調する言葉が出てくるが、そんな情の厚い大家ばかりではない。
 たとえば、旅行の通行手形の発行も、大家を通さなければならなかったし、驚くことに、結婚するにも大家の許可が必要だったのである。大家がウンと言わなければ、店子は転居して新たな大家に結婚の許可をもらうしかなかったのだ。
 しかも、大家は常に厳しく店子を監視しており、不審な言動を取る店子があれば、自己の権限で借家から退去させることができた。ちなみに大家が監視を怠らず、店子に厳しく接したのは、店子が犯罪を犯せば、大家が連帯責任を問われ、その職を失うからである。
 このように、収入が良くて力のある大家という役職は、この時代、非常な人気を呼び、人口増加に伴って増え続けた。天保年間には、何と2万人を超えたと伝えられる。

【出典】 日本実業出版(著:河合敦)
日本史の雑学事典

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  • 【辞書・辞典名】日本史の雑学事典[link]
  • 【出版社】日本実業出版社
  • 【編集委員】河合敦
  • 【書籍版の価格】1,404
  • 【収録語数】136
  • 【発売日】2002年6月
  • 【ISBN】978-4534034137










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