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 林通勝【はやしみちかつ】



2 25年前の謀反を理由に追放…信長の非情な合理主義に泣いた林通勝
 林佐渡守通勝は、尾張の織田信秀に仕えていたが、その嫡男・信長が那古野城に入城するさい、筆頭家老として平手政秀らと共に信長に従った。
 信長は、幼少より奇行を繰り返し、通勝は『まるで髭を生やした3歳児』と苦々しく思っていた。
 1554年6月、信長の弟・秀孝が単騎で馬駆けしていたところ、信長の叔父である守山城主・織田信次の家臣に誤って射殺された。それを耳にした信長の同母弟で末森城主・信行は、ただちに守山城に攻め寄せ、城下を焼き払って弟の仇を討とうとした。
 信長も守山へ向かったが、途中で秀孝の死の理由を知ると「人をもめしつれ候はで、一僕のもののごとく馬一騎にて懸けま」わっていたのが悪い(『信長公記』)と清洲城に引き返してしまった。
 信長の冷酷さに、通勝は愕然としたようだ。
 同年11月、那古野城主・織田信光が家臣に謀殺されたため、代わって通勝が信長から那古野城を任された。信長が通勝を信頼していた証拠だ。
 だが、信長のもとを離れた通勝の心は、ますます信長から離れていった。織田家中では「容姿信長に勝り、格別に気品備わり、自ずと大将の風格」(『武功夜話』)のある信行に信望が集まった。
 1556年4月、信長の舅、美濃の斎藤道三が戦死、信長はその後ろ盾を失う。
「林兄弟が才覚にて、御兄弟(信長と信行)の御仲不和となるなり」と『信長公記』にあるように、通勝はこれを機に、弟の林美作守や信行の家老・柴田勝家と共謀して、信行擁立に動き出す。
 同年5月、通勝は、信長に対して敵色を鮮明にした。清洲と那古野のあいだにある諸城は、次々と通勝になびき、決心のついた信行も8月、ついに挙兵した。信長はただちに出陣、稲生原(名古屋市西区)で信行軍と衝突する。このとき、信長軍700に比して信行軍は2千と言われ、数は信長の圧倒的劣勢だった。
 が、信長の戦いぶりに度肝を抜かれて柴田勢が崩れ去り、林美作守勢700は信長軍の猛攻で壊滅、美作守は信長自身の手で討ち取られた。信長軍は、そのまま信行の拠る末森城、通勝の拠る那古野城を囲んだ。しかし、信長の実母・土田御前が信行の命乞いをしたため、信行は許され、通勝も柴田勝家と共に再び召し出された。
 以来、通勝は織田家の宿老として仕えた。戦闘記録があまり残っていないことから、織田家の内政を担当してきたようだ。軽んじられたわけではないのは、1573年、将軍・足利義昭と和睦するさいの起請文に織田家の年寄として、柴田勝家や佐久間信盛と共に連署していること、1578年正月には信長から安土城に招かれ、茶の接待を受けたことなどからわかる。
 面白いエピソードがある。1576年の石山本願寺攻めの最中、本陣で一瀬久三郎が守っている信長の兜が北向きなのに気がついた林通勝は、走り寄って「位置が違うではないか。北向きは死者だ!」と一喝した。久三郎がただちに直そうとしたところ、それを見た信長は「戦いの最中だ。かまうな!」と叫んだという。ここに両者の決定的な違いがある。迷信にこだわった保守的な通勝に対し、信長は合理的無神論的であった。
 1580年、本願寺と講和して畿内を掌握した信長は、功のない老臣たちを追放し、家臣団の再編成を断行した。林通勝もその対象とされ、何と25年前の謀反事件を口実に、弁解も許されず追放されたのである。
 織田家の宿老という伝統的権威を失った通勝は、追放後間もなく、京都で没し、清洲養林寺に葬られたと伝えられる。

【出典】 日本実業出版(著:河合敦)
日本史の雑学事典

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  • 【辞書・辞典名】日本史の雑学事典[link]
  • 【出版社】日本実業出版社
  • 【編集委員】河合敦
  • 【書籍版の価格】1,404
  • 【収録語数】136
  • 【発売日】2002年6月
  • 【ISBN】978-4534034137










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