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 長慶天皇【ちょうけいてんのう】



6 強硬派・長慶天皇栄枯盛衰…同じ南朝内の天皇家でも主流派争い?
 1926年10月21日、皇統(天皇家の系図)に新たに天皇が1人加えられた。第98代長慶天皇である。1368年から1383年までの16年間、南朝方の天皇として実在した人物である。長慶の即位に関しては、江戸時代より賛否両論があり、決着を見ていなかったが、八代国治氏や武田祐吉氏の精力的な研究と新史料の発見により、その在位が確かめられたのだ。
 長慶天皇は学問に長じ、『新葉和歌集』にその歌を残したり、『源氏物語』の注釈書として名高い『仙源抄』を著している。だが、後村上天皇の第1皇子・寛成親王として生まれた長慶は、その横顔に似合わず、父の死後に皇位を継ぎ、南朝のなかでも強行派として『大義名分論』を掲げ、武家方(北朝方)の降伏以外、南北朝の合一はあり得ないという態度をとり続けた。
 長慶が即位すると、後村上天皇のもとで武家(室町幕府・北朝)方との和議工作を推進してきた和平派の中心的人物・楠木正儀(楠木正成の息子)は孤立してしまい、即位翌年の正月、突如として武家方に寝返っている。以後、南朝は、長慶天皇率いる強行派が主流となった。 
 強行派を主流へと押し上げた背景には、九州南朝軍の勃興がある。この時期、懐良親王(長慶天皇の叔父)率いる九州南朝軍は、ほぼ九州全土を制圧するほどの勢力を保持していた。その存在は、長慶の大きな精神的支えだったはずだ。
 だが、1372年、状況が一変する。室町幕府3代将軍・足利義満に派遣された今川了俊の軍略により、九州南朝軍の拠点である大宰府が陥落し、大幅にその勢力が縮小したのだ。長慶天皇の綸旨(天皇の意思や命令を伝える簡略な私文書)全46通中、同年を境に、以前が31通、以後が15通と数が激減している(森茂暁氏『南北朝合体の相克』より)ことからも、そのダメージの大きさがわかる。
 武家方となった楠木正儀は、これに乗じて1373年、長慶天皇の行宮である天野山金剛寺(大阪府河内長野市)を攻撃し、強行派の中心的人物だった四条隆俊を討ち取った。長慶は、大和の吉野を経て栄山寺(奈良県五条市)に逃れた。
 このような状況のなか、強行派に代わって和平派が次第に台頭、ついに南朝は、1382年正月、武家方に寝返った楠木正儀の帰参を許し、そのうえ、正儀は長慶天皇から参議の位を与えられることになる。長慶にとって、正儀への授位は、大変不本意なことであったろう。
 1383年、往年の勢力を失い、矢部(福岡県八女郡矢部村)に隠棲していた懐良親王がひそかに没し、同年、長慶は弟の後亀山天皇に譲位した。おそらく、正儀の帰参に力を得た和平派が、長慶に譲位を強く促したのであろう。
「敬白 発願事 今度雌雄如思者 殊可致報賽之誠一之状如件 元中二季九月十日  太上天皇寛成 敬白」
 これは、1385年、長慶が高野山丹生明神に納めた願文である。長慶は、誰と雌雄を決しようとしたのであろうか。一説には、相手は武家方ではなく、後亀山天皇を中心とした和平派だと言われている。いずれにせよ、譲位後3年を経てもなお、南朝のなかに後亀山天皇の和平派と拮抗しうる勢力を長慶上皇が保持していたことがわかる。
 しかし、大勢は長慶方になびかなかった。1392年、ついに後亀山天皇は都へ遷り、後小松天皇に神器を譲った。南北朝の合一である。このとき、長慶上皇は後亀山天皇と行動を共にせず、都へ戻らなかった。そして、合一後も各地の南朝遺臣に働きかけ、南朝再興運動を指揮していたという。

【出典】 日本実業出版(著:河合敦)
日本史の雑学事典

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  • 【辞書・辞典名】日本史の雑学事典[link]
  • 【出版社】日本実業出版社
  • 【編集委員】河合敦
  • 【書籍版の価格】1,404
  • 【収録語数】136
  • 【発売日】2002年6月
  • 【ISBN】978-4534034137










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