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 PCI:経皮的冠動脈インターベンション【ぴーしーあい:けいひてきかんどうみゃくいんたーべんしょん】


PCI:Percutaneous Coronary Intervention



概論
 PCI(経皮的冠動脈形成術と呼ばれています。PTCAともいいます)という治療は、スイスのアンドレアス・グルンツィッヒによって1977年に開始されました。現在では安全で有効な狭心症の治療法として、世界中の国々で多くの患者さんがPCIを受けています。わが国では、年間10万例以上の患者さんに行われています。
 PCIとは、P:Percutaneous→経皮的、C:Coronary→冠動脈、I:Intervention→インターべーション(形成術)ということを意味しています。
 わが国で風船療法という名前で知られているバルーン形成術は、冠動脈内腔が狭くなった部分、または閉塞している部分を、先端にバルーン(風船)のついた細い管(バルーンカテーテルといわれる)などを使って広げる治療のことです。これは、動脈の狭くなった部分に、バルーンカテーテルを到達させます。そこで、バルーンをふくらませると、その圧力により血管の壁面を外側に押し広げることができ、その結果、内腔が広がります。
 バルーン形成術には、いくつかの問題点が残されていました。それは再狭窄、急性冠閉塞、そしてバルーン形成術が不適病変の存在です。再狭窄とは拡張した部分が3~6カ月後に内膜組織の増殖で再び内腔狭窄をきたすものです。急性冠閉塞とは、狭窄部分を拡張した直後に逆に病変部の閉塞を引き起こしてしまうことです。これは、拡張した部位が損傷を起こし、そこに血栓ができることで生じます。急性心筋梗塞という重大な合併症にもつながる問題です。バルーン形成術不適病変は、たとえ経験のある術者が行っても良い結果が期待できません。
 これらがバルーン形成術の問題点でしたが、これらの問題点を克服する目的で様々な新しい道具が開発されました。これら新しい道具の原理は以下の2つに大別されます。[1]冠動脈を内側から支える道具と、[2]冠動脈硬化組織を血管内から除去する道具です。[1]はステントといわれ、網目、構造や材質の違いにより数多く開発されています。[2]はDCA(directional coronary atherectomy;ディーシーエイ)とRotablator(ロタブレーター)が存在します。ステントは、血管の内側を筒状の金網で支える方法です。ステントは金属(ステンレス)の金網状チューブです。材質のほとんどはデザインの違いにより10種類近くも使用されています。ステントを用いることにより、再狭窄を減らすことができます。
 DCAカテーテルの先端にハウジングがあり、この中にカッターが収納されています。ハウジングにはウインドーが開いており、対側にはバルーンがあります。このバルーンを拡張させることによりウインドーが動脈硬化組織に押しつけられます。ここでカッターを前進させることにより動脈硬化組織の切除を行う方法です。器具が硬く太いこと、術者の技量により結果に差異があります。唯一、左主幹部にかかる左前下行枝の付け根の狭窄などに対しては、DCAは良い適応です。
 ロタブレーターは先端部分が高速度で回転し、動脈硬化組織を電動ドリルのように削り取っていくものです。この先端部は正常血管壁には損傷を与えず硬い病変部のみを削るようにできています。バルーン拡張を含めた多くの方法が石灰化を伴う硬い病変に対しては効果がないのに対して、ロタブレーターは高度に石灰化した病変に対しても有効であるのが最大の特徴です。
 今では、拡張効果が確実であるとの理由で約90%以上の患者さんがステントを挿入されています。アテレクトミー(DCA)あるいはロタブレーターが必要な例は1%以下です。

PCIの適応
 PCIは成功率(98%以上)と合併症の低下(0.5%以下)から、主要冠動脈枝のある狭窄に起因するほとんどすべての狭心症が適応となりますが、三枝病変例(左前下行枝、回旋枝、右冠動脈枝すべてに狭窄がある)、左主幹部例では冠動脈バイパス術に適応があります。

PCIの実際
 通常の血管内冠動脈形成術(PTCA)では、前日に循環器病棟に入院し、手術後の1泊目は冠状動脈集中治療室(CCU)、翌1泊は循環器病棟の一般病室に入院します。最大限の安全性を配慮して心臓外科医チームを待機させています。
 治療前日は、治療についての説明や、治療に必要な処置が行われます。翌日の治療のために、内服薬の変更や食事・飲水の制限などがあります。また、前日の夜は翌日の治療に備えて十分な休息が必要です。不安や緊張のために眠れないことがあるような時は、安定剤を服用していただくこともあります。
 心臓カテーテル検査室とは、X線検査室と手術室を組み合わせたような清潔な部屋です。冠動脈造影検査と同じ要領で、局所麻酔し、カテーテルは足の付け根や腕の動脈(それぞれ大腿動脈、上腕動脈といいます)から挿入します。最近では多くの施設で手首の動脈(橈骨動脈)からカテーテルを挿入しています。術後の安静度からいえば、橈骨動脈→上腕動脈→大腿動脈の順で安静度が重たくなっていきます。
 治療終了後は、CCU(循環器集中治療室)に戻ります。CCUに戻ってからは、心電図モニターによって注意深く観察されます。3時間後にカテーテルを血管の中に出し入れする鞘(シース)を抜きます。シースを抜いた足の付け根や腕が張ってきた場合は、皮下血腫ができていることがあります(0.5%以下の頻度)。尿によって、造影剤は体から排泄されますので、飲水の許可が出たら気分の悪くない限り、多めに飲水をします。尿の管が(尿カテーテル)入っていない場合は、排尿はベッド上で行います。
 このような動作で助けが必要な場合は、看護師の介護があります。治療終了後は、2~3時間のベッド上安静が必要です。シースを入れてCCUに帰ってきた場合は、シースを抜いた後もしばらくの間(通常翌朝まで)安静が必要になります。PTCAが終了すれば、2日後には退院が許可されます(一部の施設では、2泊3日コースをとっていますが、橈骨動脈、上腕動脈アプローチでは1泊2日コースをとる施設もあります)。
 退院後も内服治療は続きます。薬は決められた量を決められた時間に服用することが求められます。薬物療法(内服治療)は、自宅に戻ってからの大事な治療になります。自分の判断で勝手に中止しないようにしましょう。
 ステントを入れた場合は、約1カ月間血液を固まりにくくする薬(チクロピジンあるいはクロピドグレル)を内服します。薬剤溶出性ステント(DES:drug eluting stent)では、アスピリンとそれらの薬を併用します。その場合、歯ぐきから出血してしまうことがあるかもしれません。そのような場合は、すぐに主治医に申し出て下さい。また。この薬はまれではありますが肝障害が発生しますので(退院後1カ月以内)、外来受診時に採血が必要となります。
 退院後の回復の具合を確認するためにも、定期的な診察が必要になります。そのためにも、医師の指示に従って退院後の検診は定期的に行いましょう。また、検診日でなくても胸の痛みなどの症状を感じたら早急に受診することが重要です。

再狭窄の問題
 術後6カ月以内に風船療法では約30%、ステントでは10%程度の再狭窄が生じます。その場合には、再PCIが行われています。その成功率はほぼ100%です。ステントに免疫抑制剤、もしくは抗ガン剤を付着させ再狭窄に結びつく新しい組織の増殖を防ぐ薬剤溶出性ステント(DES)では、再狭窄率は5%以下になります。 (出川敏行

【出典】 寺下医学事務所(著:寺下 謙三)
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