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 まずは予診から



 さて、モデルとなる患者は、中堅の商社で係長になったばかりのサラリーマン奥さんに付き添われて来院しましたが、腰痛がひどい様子で、乗ってきたタクシーからも一人では降りられないほどでした。
 治療院では簡単な受付をすませたあとすぐに予診票を渡します。患者が来院したら、なによりもまず予診票に必要事項を記入してもらいます。これは現代医学の病院と同じです。

●予診票
(患者)男性35歳・身長/170cm・体重/80kg・職業/会社員
(主訴)反復性の腰痛、再発2日目
現病歴)7年前に結婚した。不規則だった食事をきちんと3回摂るようになったうえに、仕事もデスクワークが増えて体を動かすことが少なくなったせいか、2年間で10 kg ほど太った。5年前、趣味のテニスをやっている最中に腰を痛めて以来、ときどきぎっくり腰を起こすようになった。反復するうちにふだんでも鈍痛がするようになったので、病院で検査を受けたところ、ヘルニアなどとくに大きな問題は見つからず、疲労がたまると「筋膜性の腰痛」を起こすのだろうといわれた。しかし、前回のぎっくり腰のときに湿布と鎮痛剤を出してもらったが、結局4日間も寝込み、回復までに1週間以上もかかったうえに、薬のせいか胃腸の調子まで悪くなってしまった。
 今回は、昨日出張先の広島から新幹線で帰ってきたのだが、疲労ぎみだったためか車内で缶ビールを2本飲んだだけで寝込んでしまい、クーラーの寒さで目が覚めた。駅に着いて降りようと荷物を持とうとしたとたんギクッときて立てなくなった。

●予診からの判断
 前記のような内容を、すべて患者が予診票に記入したわけではありません。患者が記入した事項をもとにいろいろな質問を行い、その回答も合わせてまとめています。
 東洋医学では患者の症状を診断して治療方法を決定することを「弁証論治」といい、そのための診察方法として「四診」(望・聞・問・切)があります。予診票を見ながら行う問診もその一つで、実際に患者本人に答えてもらうことで、患者が記入したことよりもくわしい内容を引き出します。また、その際の患者の話し方や様子なども、診断をするための重要な情報になります。
 予診では、現代医学に基づく診断名に対して先入観を持ち過ぎないことがとても重要になります。明らかな骨折とかヘルニアといったように解剖学的にはっきりしたものでない限りは、東洋医学の治療は東洋医学の診断に基づくのが基本です。この患者の場合、「疲労による筋膜性腰痛」が現代医学での診断にあたります。しかし、患者の様子や話からひどい腰痛であることは明らかであっても、それがどういう性質の腰痛なのかは、あくまでも東洋医学の考え方にのっとって判断をしなくてはいけません。はっきりしているのは腰が痛いことだけで、あとはまだ白紙なのです。

●「病の本質」を考える
東洋医学の基本的な考え方に、「病の本質」というものがあります。「病の本質」とはその症状を引き起こしている主たる原因をいいます。
もしこの患者の腰痛が、転んでひどく尻餅をついたとか、スポーツをしていて強く腰を打ったなど一過性の要因で起こった急性症状なら、単純に腰部のダメージだけを考えればよく、その急性症状を抑える治療方法だけ検討すればすみます。絶対にないとはいえないものの、体質による根本的な要因が「病の本質」になっていることは少ないのです。
 しかし、予診によるとこの患者の場合は5年前から何度も反復して起こり、ふだんでも鈍い痛みがあると言っています。しかも今回は、ちょっとした冷えと軽い荷物を持ち上げただけという、ふつうならなんでもないような動作がきっかけで再発しています。これらを合わせると「病の本質」として体質的な要因を抱えていると推測できるので、それを追求しなければならないと考えるわけです。
 体質的な要因を考えるときは男女別、年齢、住環境などといった「患者の個人差や生活状況を考慮する(三因制宜)」ことが大きなポイントの一つになります。この患者は35歳なので年齢からくる老化との関連はまだ少なく、むしろ結婚とデスクワークが多くなったことで10kgも体重が増えたという生活の変化による肥満の方が問題だと思われるので、「体内に不要な水分(痰湿)が多い」という診断が、体質的な要因の候補としてあげられます。
 さらにもう一点、受診のきっかけになった列車内での腰痛が、ふだんから続いている腰の鈍痛と同じ性質のものかを考慮する必要があります。患者自身は今の痛みがひどいために、ふだんの鈍痛のことなどどうでもよくなっているかもしれませんが、両方の腰痛の原因が同じであるとは限りません。たとえば、「病の本質」である体質的な要因で起こっているのはふだんの鈍い腰痛で、今のひどい腰痛は単純な急性症状かもしれないのです。
 仮に原因が違っている場合、最初に施す治療は「病の本質」に対するものではなく、対症的なものになります。患者を今もっとも苦しめている症状を取り除くことが先決だからです。

【出典】 日本実業出版社(著:関口善太)
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東洋医学の正しい知識がわかる本。「病気はなぜ起こるのか」「そしてどうやって治すのか」「病気の証とは何か」など現代医学とは違う視点・考え方で詳しく解説。
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  • 【辞書・辞典名】東洋医学のしくみ事典[link]
  • 【出版社】日本実業出版社
  • 【編集委員】関口善太
  • 【書籍版の価格】1,620
  • 【収録語数】115
  • 【発売日】2003年7月
  • 【ISBN】978-4534036179










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