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 肺炎【はいえん】


Pneumonia



 我々の周りの大気中には様々な微生物が浮遊しており、肺は呼吸のために常にそれを吸入しているので、いわば常時それら微生物の侵入の危険にさらされているといえます。また我々の口腔(こうくう)、咽頭(いんとう)にも微生物が常在しており、呼吸はそこを通って行われます。それにもかかわらず、我々の肺の中は常に無菌に保たれています。これは驚くべきことですが、数々の精密な防御機構がそれを可能にしています。肺という臓器にとってこれは不可欠のことです。なぜならば、肺の基本的役割である呼吸=ガス交換(酸素を取り込み、炭酸ガスを排出する)にとって、肺という場は常にドライでなくてはならないからです。この肺の中に微生物が侵入し炎症を起こし、肺の一部が水浸しになる、それが肺炎という病気ですので、肺炎は生命に直結しうる病態であることがこれから理解されるでしょう。
 肺炎という病気を理解するには、侵入する微生物についての知識、そしてそれに対して体のほうがどう反応するかの両面からの考察が欠かせません。
 微生物に着目した場合、肺炎は、細菌性肺炎(さらに細かく菌種別に議論することもある)、非定型肺炎(マイコプラズマ、レジオネラ、クラミジアの3種は症状、治療とも一般の細菌性肺炎と違うので最近はまとめてこう呼びます)、ウイルス性肺炎、真菌性肺炎などに分類されます。また、普通の生活環境と病院とでは微生物の種類が大きく異なるので、普通の生活をしていてかかった肺炎を「市中肺炎」、病院内で感染して起こる肺炎を「院内肺炎」とする区別もよく行われます。また、生体の免疫力が低下していると普通の人ではあり得ない微生物の感染が起こりますので、これを「日和見(ひよりみ)感染症」と呼びます。
 肺炎による死亡はわが国の死亡原因の第4位を占め、人口10万人あたり70人ですが、高齢者(70歳以上、とくに85歳以上)では罹患(りかん)率、死亡率ともに高く、90歳以上では死亡原因の1位を占めます。
 すべての肺炎が生命の危険をもたらすわけではなく、近年の抗菌薬の進歩もあり、外来治療で十分治る肺炎も数多くあります。しかし、高齢(70歳以上)、免疫力の低下する病気を持っている場合(糖尿病、腎不全、進行ガン、血液疾患、AIDSなど)、あるいは肺がすでに荒れている状態(肺気腫症、肺線維症など)の場合などは、病状が急速に悪化し、危険な状態になりうるので入院治療したほうが安全です。どういう場合に入院になるかは、日本呼吸器学会がガイドラインを作って示しています。なお、本項でいう肺炎では、病気は主に肺胞(はいほう:空気の出入りするスペース)に起こりますが、これに対して、主として肺胞の壁(間質)を冒す肺炎があり、「間質性肺炎」と呼ばれます。細菌によるものは少なく、薬剤の副作用、免疫異常(膠原〈こうげん〉病など)、吸入された真菌などに対する過敏性反応などによって起こりますが、原因がわからないものも多く、これを「特発性間質性肺炎」と呼びます。

【出典】 日本医療企画(著:寺下 謙三)
標準治療(寺下医学事務所)

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  • 【辞書・辞典名】標準治療[link]
  • 【出版社】日本医療企画
  • 【編集委員】寺下 謙三
  • 【書籍版の価格】5,142
  • 【収録語数】1,787
  • 【発売日】2006年7月
  • 【ISBN】978-4890417162










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