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耳鼻咽喉科

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メニエール病【めにえーるびょう】
Meniere Disease

[受診科] 耳鼻咽喉科
【概説/特徴と原因 】
 聴覚と平衡感覚のセンサーである内耳(ないじ)は、骨迷路という骨の中の空洞に、膜迷路すなわち感覚細胞からなる袋が収められた構造になっています。骨迷路と膜迷路の隙間は外リンパ(液)が、膜迷路の袋の中は内リンパ(液)が満たしています。メニエール病は膜迷路が膨張する内リンパ水腫(すいしゅ)によって、めまい、耳鳴り、難聴などの症状を繰り返す病気です。
 内リンパ水腫がなぜこれらの症状を反復して引き起こすのかはいまだに明確にされておらず、また内リンパ水腫自体の原因も不明で、内リンパの吸収障害説、過剰産生説、内耳の循環障害説、ウイルス感染説、ホルモン異常説、ストレスによる自律神経失調説などの諸説があります。
 「メニエール病」という病名の認知度は高く、めまいの代名詞のように使われたり、内耳性のめまいや回転性めまいを何でも「メニエールだ」と安易に判断する医者も少なくありません。これはかつて内耳に起因する突然のめまいや難聴を「メニエール症候群」と呼んだ前世紀の名残です。耳鳴りや難聴を伴わないめまいや、1回だけのめまい発作を「メニエール病」と診断するには、内リンパ水腫の証明など高度に専門的かつ慎重な診療手順が必要です。
【症状 】
 三主徴(さんしゅちょう)は、めまい、耳鳴り、難聴です。これらの症状が反復すれば診断は比較的容易ですが、初回発作時の診断は必ずしも容易ではありません。メニエール病のめまいは典型例では回転性の激しいめまいで、じっとしていても自分の体やまわりの景色が回転する感覚を伴います。軽い場合は回転感ではなくふらつきとして自覚されます。
 めまいは20分以上持続するといわれています。悪い耳を下に向けるとめまいがより強くなることもあります。吐きけなどの自律神経症状をしばしば伴います。耳鳴りと難聴はめまいと前後して生じることも、めまいと同時に始まることもあります。「ブーン」というような低音の耳鳴りや低音域の難聴はメニエール病の特徴ですが、他にも様々な周波数の難聴や耳鳴りが生じることがあります。
 三主徴の他、耳閉感や、音が響く聴覚過敏(補充現象による)、音のひずみなどの症状がみられることもしばしばあります。内リンパ水腫が内耳の中の蝸牛(かぎゅう)あるいは前庭に限局性に生じることもあるとされ、それぞれ蝸牛型メニエール病、前庭型メニエール病と呼ばれます。
 蝸牛型メニエール病ではめまいを伴わずに難聴と耳鳴りだけが反復し、前庭型メニエール病では難聴や耳鳴りを伴わずにめまいだけを繰り返すとされています。蝸牛型メニエール病については内リンパ水腫の存在が証明されており、近年増加している低音障害型感音難聴との差異が論じられています。
 レルモワイエ症候群では蝸牛と前庭に内リンパ水腫が生じる時期がずれるため、難聴や耳鳴りとめまいが同時には生じず、難聴や耳鳴りが先行して生じ、続いてめまいが生じると難聴や耳鳴りが軽快するといった特異な経過をたどります。
 発作期にはこうした様々な症状が現れますが、やがて症状のない寛解期(かんかいき)に移行します。しかし発作を繰り返すうちに寛解期になっても難聴や耳鳴りなどの症状が持続するようになります。無治療で放置すれば高度難聴に至ることもあります。メニエール病の患者さんの15〜30%は両耳が障害を受けるといわれています。
【診断 】
 受診時に三主徴がそろい、かつ症状が反復した経過があれば診断は容易です。症状のない寛解期における診断は必ずしも容易ではなく、また初回の発作時では「めまいを伴う突発性難聴」との鑑別が困難な場合があるといわれています。
 発作期には水平回旋混合性の眼振(がんしん)が患側向きあるいは健側向きに認められるとされています。聴力検査では低音域を中心とした感音難聴がしばしば認められます。グリセオールにより内リンパ水腫が軽減されると難聴が改善します(グリセオール試験)。この他、内リンパ水腫を確かめる検査法としてはフロセミド試験や蝸電図があります。迷路瘻孔(ろうこう)症状検査が陽性であれば外リンパ瘻(ろう)が疑われますが、陽性でなくても発症時に「いきみ」や「鼻かみ」など中耳圧や脳圧に変化があったと考えられる場合には外リンパ瘻を疑います。内耳梅毒(ばいどく)や遅発性内リンパ水腫でも同様の内リンパ水腫が起こります。これらの疾患はメニエール病類似疾患と呼ばれます。
【標準治療 】
 有酸素運動の有効性が近年報告されています。医療機関で行う治療は、薬物療法が中心となります。薬物療法では発作がコントロールできない場合は外科的治療の対象となります。
●標準治療例
[1]軽症例や寛解期の再発予防
 ・アデホス顆粒3g/日、メチコバール1,500μg/日(1日3回に分けて毎食後)または柴苓湯(さいれいとう)8.1〜9g/日(1日3回毎食前)
 ・必要に応じて抗不安薬を併用:メイラックス1mg/日、デパス0.5〜1.5mg/日、ワイパックス1.5〜3mg/日など(1日1回就寝前または1日3回に分けて毎食後)
 めまい時は以下を頓用
 ・メリスロン12mg
[2]中等度症例
 ・イソバイド75〜140mL/日(1日3回に分けて毎食後)
[3]重症例
 ・プレドニンまたはプレドニゾロン30〜60mg/日(1日3回に分けて毎食後)より漸減
[4]発作急性期
 ・ソル・コーテフ300〜500mg/日点滴静脈内注射(静注)、2日ごとに漸減、メイロン20cc×2本、セルシン5mg(点滴に混注)
 吐きけが強い場合には以下などを点滴静注
 ・プリンペラン10mg
[5]外科的
 内リンパ嚢(のう)を切開することで内リンパの吸収障害を取り除こうとする内リンパ嚢開放術や、めまい発作の原因となる内耳を部分的に破壊する手術、あるいは内耳の情報を中枢へ伝達する前庭神経の切断術などが行われることがあります。
【予後 】
 生命予後は極めて良好です。めまい、難聴、耳鳴りなどは、発症初期の適切な薬物療法により多くのケースで再発予防が可能です。初期治療が不十分だったり寛解期における維持療法を怠ると発作が再発し、徐々に難聴、耳鳴りが進行します。発症時は片側のみの障害であった症例に反対側の障害が出現し両側性となることもめずらしくありません。
【生活上の注意/予防 】
 有酸素運動が有効であることから、運動不足が発症に関与している可能性があります。また、ストレスを蓄積させないことが重要です。いったん発症してしまったら寛解期もきちんと運動や薬を続けたほうが、両側化を防ぐためにもよいでしょう。
【特殊治療 】
 鼓膜切開をした上で、外耳道圧を「メニエット」という機械で加圧する中耳加圧療法があります。また、内耳を保護する薬剤(ステロイドホルモン)や破壊する薬剤(アミノグリコシド系抗生物質)を鼓室内投与する治療法があります。内リンパ水腫軽減に水分制限、または水分負荷を行う治療法もあります。
このページの執筆医師【倉島一浩

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編集 寺下 謙三
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サイズ 21.8x15.6x6.6cm(A5判)
発売日 2006年7月
ISBN 978-4890417162
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