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卵巣ガン(含む良性卵巣腫瘍)【らんそうがん(ふくむりょうせいらんそうしゅよう)】
Ovarian Cancer

[受診科] 婦人科
■画像(2)
【概説 】
 卵巣ガンは卵巣にできるガンですが、発生の元になる組織によって大きく3つに分けられます。まず、[1]卵巣を包んでいる腹膜(ふくまく)組織が元になっているガン、次に[2]卵子が腫瘍(しゅよう)化した腫瘍、そして[3]ホルモンを分泌したりする卵子の周囲の組織から発生したと考えられる腫瘍です。
 一般に卵巣ガンといった場合、表層上皮性卵巣ガンを指しています。卵巣を包んでいる腹膜から発生します。ガン細胞の顔つきが、どの臓器の細胞に似ているかによって、腫瘍のタイプ(組織型)に名前がついています。
表1:卵巣ガンのステージ
[1]漿液(しょうえき)性腺ガン:上皮性卵巣ガンの約40%を占めます。ガン細胞は卵管の細胞に似ています。診断される年齢は、30歳代後半から60歳代。抗ガン剤が比較的よく効きます。
[2]移行上皮ガン:上皮性卵巣ガンの約5%を占めます。尿路膀胱の細胞に似ています。抗ガン剤が非常によく効きます。病理組織像は漿液性腺ガンに似ています。治療上は、漿液性腺ガンと厳密に区別する必要がない場合が多いのですが、漿液性腺ガンに比べても、抗ガン剤が非常によく効きます。ステージが進んでいても、諦めることなくがんばって治療する価値があります。
[3]類内膜型腺ガン:子宮内膜の細胞に似ています。卵巣ガンの約15%を占めます。発症年齢は30〜60歳代ですが、[1]より若い傾向にあります。抗ガン剤が比較的よく効きます。
[4]粘液性腺ガン:細胞内にたくさんの粘液を蓄えています。卵巣ガンの約15%を占めます。一般に細胞の増殖が遅く、成長がゆっくりです。転移を起こしにくい反面、抗ガン剤にほとんど反応しません。
[5]明細胞腺ガン:上皮性卵巣ガンの約25%を占めます。顕微鏡で観察した時に、細胞が明るく抜けて見えることからこの名前があります。抗ガン剤が効きにくい代表格のガンであることから、悪性度が高いと考えられていますが、増殖発育は遅く、ガンが腹腔内に広がっていない状態で、手術で完全に切除できれば、手術だけでも根治可能です。
[6]混合型:[1]から[5]のタイプのガンが混在したものです。様々な組み合わせで、様々な割合での混在が考えられます。一般には、その中で最も大きな割合を占める成分を選んで組織型の診断としますが、治療上問題になるのは、腫瘍の中で占めるボリュームではなく、悪性度の高い成分はどれか、どの程度含まれているかということです。
[7]未分化ガン:細胞の形、組織の様子からは、[1]から[5]のどれにも当てはめようのないタイプです。ガン細胞は、由来する臓器の細胞に顔つきが似ているほどおとなしいという考え方からすれば、未分化ガンは、何にも似ていないわけですから、悪性度がきわめて高いことになります。ガンの広がり(ステージ)とは無関係に非常に予後不良です。
 卵子が腫瘍化した腫瘍は胚細胞腫瘍と呼ばれます。卵巣の悪性腫瘍の約5%を占めます。卵からヒトの体が出来上がってくるまでの様々な段階の、様々な臓器の細胞に似た腫瘍細胞でできています。ヒトの発生のどの段階の細胞に似ているかによって腫瘍のタイプを決めています。表層上皮性卵巣ガンに比べると患者さんの年齢は若く、10歳代から30歳代で発症します。閉経後の方にこのタイプの腫瘍が見つかることは非常に例外的です。腫瘍は多彩で、すべてのタイプをあげると説明がわかりにくくなってしまいますので、代表的なものについて述べます。
[1]未分化胚細胞腫:胚細胞腫瘍の約25%を占めます。
[2]卵黄嚢腫瘍:胚細胞腫瘍の45%を占めます。
[3]胎芽性ガン:胚細胞腫瘍の1%以下と稀な腫瘍です。
[4]奇形種:悪性は未熟奇形種です。成熟奇形種は良性腫瘍です。ヒトの体を構成する組織が不完全な状態でいろいろと詰まっているので、奇形腫と呼ばれます。未熟奇形腫は細胞の未熟さ、悪性度によってグレード1〜3に分類されます。グレード3の腫瘍は際立って悪性度が高く、手強い腫瘍です。胚細胞腫瘍の約15%を占めます。未熟な成分の代表は神経成分です。胎児期の未熟な神経細胞で構成された腫瘍は極めて予後不良です。
 [1]→[2]→[3]→[4]の順に卵に近い未熟な細胞ということになります。この場合、未熟であるということは、細胞がいろいろな能力を持っていて、活動が活発であることを意味します。悪性度が高いともいえますが、胚細胞腫瘍は一般に抗ガン化学療法がよく効くので、抗ガン剤さえよく効けば、ステージによって予後はあまり違いません。
[5]絨毛(じゅうもう)ガン:絨毛は胎盤の成分です。非常に悪性度の高い腫瘍ですが、抗ガン化学療法がよく効きます。妊娠に関係して発生する子宮体部の胞状奇胎、絨毛性疾患に性質が似ています。妊娠反応で検査するヒト絨毛性性腺刺激ホルモンを分泌します。妊娠初期と同じホルモンバランスになりますので、月経の異常が起こったりしますが、同時にこのホルモンは治療効果の指標として非常に役に立ちます。
 卵巣の中でホルモンをつくる細胞などが腫瘍化したものは性索間質性腫瘍と呼ばれます。胎児期に卵巣の元になる組織が性索です。正常な卵巣では、卵子を取り囲むように顆粒膜細胞という細胞が並んでいて、女性ホルモンを分泌しますが、このような細胞が腫瘍化したタイプです。腫瘍も女性ホルモンを分泌します。胚細胞腫瘍とは逆で、患者さんの多くは40歳代以降、とくに閉経後の方です。
[1]顆粒膜細胞腫:エストロゲンを分泌します。閉経後に不正出血を起こしたり、子宮内膜を異常に増殖させたりします。エストロゲンの一方的持続的な刺激によって子宮内膜ガン、乳ガンができやすいとされていて、実際に子宮体ガンや乳ガンが同時に診断されることがあります。充実性の腫瘍なので、はじめは子宮筋腫ではないと疑われて、検査が始まることもあります。
[2]莢膜(きょうまく)細胞腫:卵巣の繊維腫と呼ばれるものの中に、一部を構成する成分として診断されることが多いタイプですが、この腫瘍も女性ホルモンを分泌します。腫瘍の性質としては良性と考えてよいと思います。

【症状 】
 腫瘍の性質によって、その症状は様々ですが、他の婦人科ガン、子宮頸ガンや子宮体ガンと違って、卵巣ガンは症状が出にくく、発見が遅れがちなガンの代表とされています。お腹の中はスペースに余裕があるので、腫瘍が存在するという理由で何か症状があるとすれば、それはかなり腫瘍が大きくなってからのことです。粘液性ガンは、悪性度のあまり高くないものが多く、大きくなるまで、周囲に悪さをしません。ベルトがしまりにくくなったといった症状から直径50cmほどの大きな腫瘍が診断されることがあります。
 最もありがちな症状は、腹水による腹部の膨満(ぼうまん)、さらに悪化して呼吸困難です。ガンが腹腔内に広がり、ガン性腹膜炎という状態で、異常な腹水が溜まり始めます。お腹が張ってく苦しいだけではすみません。腹水はただの水ではなく、栄養を豊富に含む血液の液体部分と同じですから、溜まった腹水の分だけ水分が血液中から奪われたことになり、血管内は脱水になります。血液量の減少で血圧が下がり、全身の状態が急激に悪化します。卵巣ガンの患者さんの約60%の方は、ガンがお腹の中に広がって、このような病状になってから診断されます
 胚細胞腫瘍の未分化胚細胞種や、性索細胞腫の顆粒膜細胞腫は非常に脆弱で出血しやすく、腹腔内への大量出血をきっかけに診断されることがあります。未分化胚細胞腫では高熱が続いたりします。顆粒膜細胞腫などのホルモン産生腫瘍では、女性ホルモンが子宮内膜に作用して不正出血を起こすことがあります。
【診断 】
 最も精度の高い検査は手術で腫瘍を摘出し、病理組織学的診断をつけることです。手術前の検査は、あくまでも良性、悪性どちらの可能性が高いのかをなるべくに正確に予測しようというものです。99.99……%正しくても、手術前に100%はあり得ません。すでに腹腔内にガンが広がり、腹水がたまっているようないるような場合は、腹水中に浮いているガン細胞から、ガンの診断がつくかもしれません。卵巣の腫瘍に針を刺して、腫瘍の一部を採取しようなどと考えた場合、これがガンだった場合には、せっかく腫瘍内部にとどまっていたガンを、検査手技によって腹腔内に散らしてしまうことになります。
 卵巣の場合、腫瘍という診断がついたら、次は、その腫瘍を破ることなく摘出して病理診断に提出する必要があります。腫瘍であろうという診断がついたら、精密検査にあたる次の検査が手術ということになってしまうのです。
 手術前検査は画像診断と腫瘍マーカーです。画像診断の中で最初に行われるのは超音波検査です。婦人科では経膣超音波検査といって、子宮口の近くまで小さな超音波の器械を挿入する方法が用いられます。正常な卵巣の観察も可能で、小さな異常の発見に非常に有用です。
 超音波検査で卵巣の腫瘍が疑われた場合、次にはMRIが行われます。卵巣腫瘍の質的診断は病理組織学的診断が原則ですが、MRIによって、卵巣腫瘍の中身をかなり正確に予想することができます。
 CTは、卵巣周囲への病気の広がりやリンパ節の腫れについて検査することに向いています。質的診断の決め手とはいえませんが、血液検査で腫瘍マーカーを調べることは、病気の進行度を知る上で参考になります。腫瘍という種類の病気ができると、正常では血液中にあまりないはずのものを腫瘍が盛んにつくることがあります。その多くはタンパク質ですが、腫瘍の由来や種類によって、どのようなタンパク質をつくるのか特徴があります。1対1ではありませんが、消化器の腫瘍で異常が出やすいもの、卵巣の腫瘍で上がりやすいものという具合にある程度の対応があります。
 卵巣が腫れていることが発見された場合、卵巣ガンで異常値が出やすいCA-125というマーカーを調べて参考にするわけです。ただし、腫瘍マーカーをみる場合に気を付けなければならないことが2つあります。腫瘍が小さい場合や調べた腫瘍マーカーをつくらない性質であった場合は、腫瘍マーカーは異常値になりませんので、[1]腫瘍マーカーが正常範囲内だからといってガンの否定にはなりません。また、腫瘍マーカーは良性の病気でも異常値になったり、生理的な変動があることが知られています。CA-125の場合ですと、子宮内膜症で上昇することがありますし、月経中の検査では異常値になることがあります。[2]腫瘍マーカーが上昇していても必ずしもガンとはいえません。腫瘍マーカーはあくまでも、診断の補助手段で、画像診断や全体の病状と合わせて総合的に判断すべきものです。ガンの早期発見目的に、人間ドックなどの検診の中で受けてもそれほど役に立つものではありません。表層上皮性卵巣ガンでは、CA-125、CA19-9CEAが、胚細胞腫瘍では、AFP、hCGが、性索間質性腫瘍ではエストロゲンが腫瘍マーカーとして有用です。
【標準治療 】
 治療方針を決めるために、卵巣腫瘍の危険因子について考えてみましょう。
 卵巣ガンの危険因子を表に示します(表2:卵巣ガンの危険因子)。腫瘍の性質の診断には手術が必要ですから、手術は必須です。腫瘍が良性だった場合には、表の[2]以下の危険因子を考える必要がなくなりますので、腫瘍の切除のみで治療はおしまいです。手術前の画像診断や腫瘍マーカー検査で、良性とほぼ言い切っても良さそうな場合は、卵巣の正常部分を残して、腫瘍を刳り抜く腫瘍核出術が行われることもあります。ただしこの場合も、手術後の病理診断で悪性と診断されることがありますので、腫瘍を破かないように注意して核出することが必要です。さらに、悪性の診断がついた場合は、再手術や追加治療が必要になります。
 [1]〜[7]までの危険因子をもとに病状を評価する必要がありますので、基本的な手術は、両側付属器切除術、単純子宮全摘術、大網切除術、傍大動脈〜骨盤内リンパ節郭清術になります。ガン細胞の悪性度があまり高くはなく、片側の卵巣にガンが留まっているIa期であれば、この基本的手術で危険因子がすべて解決されたと考えられますので、治療は手術のみで終了することになります。ガンの悪性度が高い場合やIa期以外の病状では、手術だけでは危険因子が解決できませんので、手術後に抗ガン化学療法を行うことになります。ガンが卵巣以外に広がっていて、手術前からガンの診断が確定的な場合、このような病状では、手術のみですべての危険因子を解決することはほぼ間違いなく不可能です。このような場合、手術前に危険因子を減らすための治療を考えることがあります。手術前化学療法(neo-adjuvant chemotherapy ; NAC)です。ガンの組織型によって効く抗ガン剤が違いますので、手術によって、腫瘍の一部を採取し、病理組織学的診断を行うことが必要ですが、なるべく体に侵襲の少ない手術にとどめ、なるべく早く抗ガン化学療法を始めます。抗ガン剤が効いた時には、不思議なことに、ガンは周囲から縮小、消失し、あたかも原発巣に向かって縮んでいくかのように効いていきます。ステージが逆戻りしていくように効いてきます。抗ガン化学療法が効けば、卵巣以外に広がっていたガンも、卵巣周辺に限られた病状となり、手術によって完全な摘出ができる可能性が出てくるわけです。
●胚細胞腫瘍
 病理診断が胚細胞腫瘍であった場合、危険因子[1]組織型の特徴から、表層上皮性卵巣ガンとは治療方針が違ってきます。胚細胞腫瘍の患者さんが若年層であるということもありますが、抗ガン化学療法が非常によく効くことから、手術はメインの腫瘍の摘出にとどめ、後は抗ガン化学療法に委ねます。妊孕性(にんようせい)(妊娠すること)を保つことを目指します。卵巣以外に腫瘍が広がっている場合にも、腫瘍が残っていることがわかっていながら、体に対する侵襲を最小限に押さえた手術にとどめます。
●性索間質性腫
 この中で比較的頻度が高い莢膜(きょうまく)細胞腫、線維腫と顆粒膜細胞腫について述べます。
 粘膜などの組織を支える線維組織でできた腫瘍があります。ほとんどの場合、良性の線維腫で、悪性の線維肉腫は極めてまれです。線維細胞が女性ホルモンを分泌する働きを獲得したものが莢膜細胞ですが、莢膜細胞がまじっていて、女性ホルモンを分泌する腫瘍が莢膜細胞腫です。性質としては良性で、予後は良好です。
 顆粒膜細胞腫は、境界悪性に分類される腫瘍で、増殖は非常にゆっくりですが、腹腔内再発を繰り返します。腫瘍細胞の性質としては、比較的悪性度の低い腫瘍といえますが、抗ガン剤が効かないので、再発腫瘍が見つかるたびに切除手術を行います。
【予後 】
 表層上皮性卵巣ガンでは、Ia期、グレード1であれば、組織型に関係なく予後は良好で、5年生存率は95%以上です。多くの方が、手術治療のみで治癒します。ただし、ここで大切なのは、手術をしっかりとやることです。基本的な手術を省略してしまっては、正確な危険因子の評価ができません。正確な評価に基づいて診断されたIa期は手術で治ります。それに対して、Ia期以外では、その組織型によって予後が大きく違います。抗ガン化学療法が効く組織型では、ステージがある程度進んでいても、抗ガン剤の使い方を工夫することによって、長期にわたり比較的良好な健康状態を保つことが可能ですが、抗ガン剤無効の組織型で、かつステージが進んだ病状では極めて予後不良です。III期同士で5年生存率を比べた場合、抗ガン剤が比較的よく効く漿液性腺ガンでは40%ですが、抗ガン剤が無効の明細胞腺ガンでは20%です。
 胚細胞腫瘍の予後は、組織型に関わらず比較的良好で、5年生存率はI期で95%以上、II期以上のでも80%です。抗ガン化学療法が奏効するかどうかが予後を左右します。抗ガン剤が思うように効かない場合には、ほとんどの患者さんが2年以内に亡くなります。逆に、2年間再発がなければ、完治したと考えてよいと思います。
 性索間質腫瘍は、一般に細胞の増殖が遅いので、生命予後は良好です。線維腫、莢膜細胞腫は手術で完全に摘出されていれば、手術のみの治療で、5年生存率はほぼ100%です。顆粒膜細胞腫は、再発を繰り返しますが、5年生存率は80%以上です。
このページの執筆医師【片瀬功芳

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