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異所性妊娠(子宮外妊娠)【いしょせいにんしん(しきゅうがいにんしん)】
Ectopic Pregnancy/Extrauterine Pregnancy

[受診科] 産科
■画像(2)■画像(3)
【概説 】
 異所性妊娠(子宮外妊娠)は、受精卵が正常な着床部位以外に着床発育した状態で、時には激烈な下腹痛および出血性ショック症状を呈する、産婦人科領域の代表的な救急医療を必要とする疾患です。妊卵の着床部位により、卵管妊娠、卵巣妊娠、腹腔妊娠、頸管妊娠など(図)に分類されています。発生頻度は全分娩数の約1%(100人に1人)といわれており、その大部分が卵管妊娠です。危険因子として、子宮内膜症、骨盤内感染症(PID)、喫煙、排卵誘発剤、骨盤内手術既往、加齢などがあげられています。近年、性感染症(クラミジアなど)の増加や不妊患者に対する生殖補助医療の増加などにより、発生頻度が増えており、米国の統計ではここ10年間で4倍の増加を認めています。また生殖補助医療の普及により腹腔妊娠などの従来まれであった疾患も増加してきています。自然妊娠と生殖補助医療施行患者における部位別発生率を表1:自然妊娠と生殖補助医療における異所性妊娠の部位別発生率の違いを表1(表1:自然妊娠と生殖補助医療における子宮外妊娠の部位別発生率の違い)に示します。また従来は非常にまれ(3万妊娠に1人)であった子宮内外同時妊娠も、生殖補助医療施行患者では100妊娠に1人と、その危険性は著しく増加してきています。

【症状 】
 主な症状として、下腹部痛、性器出血、むかつき・嘔吐などの腹膜刺激症状、胃腸症状などが起こります。以前は、上記のような症状が起こってから患者さんが病院で受診し、急性腹症として緊急開腹手術が行われることが多かったのですが、最近では検査手段の発達により、患者さんが自覚症状を訴える前に、医師が事前に診断できるようになりました。
【診断 】
 妊娠初期の異所性妊娠の検査には、経膣超音波断層法と高感度hCG測定法が用いられます。また基礎体温表なども参考になります。表2:妊娠週数と検査陽性率との関係に示すように、妊娠4週で尿を用いた妊娠反応が陽性となり、妊娠5週には経膣超音波断層法で子宮内に胎嚢(たいのう)が確認できます。そこで妊娠5〜6週の時点で妊娠反応陽性にもかかわらず、子宮内に胎嚢が確認できない場合には、異所性妊娠の疑いが強くなります。その場合には、血中hCG(ヒト胎盤絨毛〈じゅうもう〉性性腺刺激ホルモン)量を調べて、上昇傾向を示す場合には、腹腔鏡確定診断を行います。腹腔妊娠の場合、とくに中期以降ではMRI診断が有力になります。
【標準治療 】
 手術療法と薬物療法に分かれますが、治療法の選択には症状や着床部位の他に、未婚、既婚、子どもの有無、今後の挙児(出産)希望の有無などを参考に決めます。
1)手術療法
 腹腔内に大出血していて急性腹症の症状を呈している場合には、緊急開腹手術が行われます。その際は大量の輸血を必要とする場合もあります。症状発現がなく、緊急性の少ない患者さんに対しては、腹腔鏡下手術が選択されます。この場合、輸血はほとんど必要ありません。卵管妊娠の場合、卵管を切除してしまうのか、卵管保存するのかは意見の分かれるところです。腹腔鏡下で卵管温存手術を行う場合には、卵管線状切開術を行って妊卵を摘出した後、レーザーや電気メスなどを用いて止血し、場合によっては腹腔鏡下で縫合を行います。
2)薬物療法
 抗ガン剤の一種であるメソトレキセート(MTX)が用いられ、全身投与または局所投与が行われます。その適応基準は、[1]卵管が破裂していない、[2]卵管腫瘤(しゅりゅう)の大きさが3.5cm以下、[3]胎児心拍が認められない、[4]尿中hCGが低値、といったことがあげられます。
 卵管妊娠以外の異所性妊娠では、着床部位によって治療法が異なります。間質部妊娠は子宮の楔(けつ)状切除術または場合によっては子宮全摘が必要になります。腹腔妊娠の場合、初期は腹腔鏡下手術、それ以降は直ちに開腹手術ですが、妊娠中期以降の場合には、児の体外生存が可能な時期まで待ってから、手術を行うこともあります。頸管妊娠の場合には、大量出血が予想されるため、挙児希望のない場合には、子宮全摘術を行います。子宮温存の希望がある場合には、MTX療法を行い、hCG値の低下を待ってから、子宮頸管掻爬(そうは)を行いますが、輸血の準備が必要です。
【予後 】
 卵管保存手術を行った場合、その後の妊娠率は55〜65%程度であり、挙児希望の患者さんに行われますが、一方でもう一度異所性妊娠を起こすケースが10〜18%にみられ、絨毛存続症発生の危険もあることを念頭におく必要があります。
【生活上の注意 】
 異所性妊娠は経膣超音波断層法により早期診断が可能です。自宅で市販キットで妊娠反応陽性と出た場合には、早めにお近くの産婦人科医師の診察を受けましょう。
このページの執筆医師【矢野樹理

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編集 寺下 謙三
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サイズ 21.8x15.6x6.6cm(A5判)
発売日 2006年7月
ISBN 978-4890417162
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