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形成外科・美容外科

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口唇裂・口蓋裂と顔面裂【こうしんれつ・こうがいれつとがんめんれつ】
Cleft lip , Cleft Palate , Facial Cleft

[受診科] 形成外科・美容外科

【概説 】
 顔面は受精卵が胎児になる過程の胎生4週末から7週末にかけて形成されますが、この時の形成不全により顔面に種々の割れ目(顔面裂)を生じます。この割れ目(裂〈れつ〉と呼びます)は皮膚だけのものから骨に至るものまであり、フランスの有名な形成外科医であるテシエイ博士はこれらを16タイプに分類しています。顔面裂のうち、一番多くみられるのが口唇裂・口蓋裂で、日本人では出生500〜600人に1人の割合で生まれるといわれています。その他の顔面裂には横顔面裂(巨口症)、斜顔面裂、正中裂などがありますが、口唇裂・口蓋裂に比べ極めてまれにしかみられませんので、ここでは代表的な口唇裂と口蓋裂の治療について述べます。

【症状 】
 口唇裂は先天的に上口唇(上くちびる)に生じる割れ目で、体表の先天異常症ではもっとも多いものです。片側に生じる片側口唇裂、両側に生じる両側口唇裂があり、また、割れ目が上口唇の途中で止まっている不完全口唇裂、さらに鼻孔まで裂けている完全口唇裂に分かれます。口唇裂には歯ぐきに割れ目が及んでいるもの(顎裂〈がくれつ〉)や、上あご(口蓋)まで割れている口蓋裂が一緒になることもあります。また、口蓋裂が単独で発生することもあります。
 口唇裂のみでは哺乳などに障害を起こすことは少ないのですが、口蓋裂では鼻と口の境界が割れているため、ミルクが鼻から漏れる、呼吸が困難になるなどの障害を起こします。口唇裂と口蓋裂が同時に生じた場合には、哺乳障害などの症状も重く、生後すぐに栄養状態や呼吸状態の管理が必要となります。口蓋裂では中耳炎を併発することもあります。
【診断 】
 口唇裂は体表に現れる異常ですので生まれてすぐに気がつきます。ただし、口蓋裂が単独で発生した場合や、不完全口蓋裂では口蓋垂(こうがいすい:いわゆる「のどちんこ」)の部分のみ割れているため、発見が遅れます。口蓋裂があると発声する際に鼻から空気が漏れ音声が聞きとりにくい、といった言語障害がでますので早期に発見し治療する必要があります。医師に口腔内まで十分に観察してもらえば発見は容易です。また、口唇裂・口蓋裂には四肢の異常、先天性心疾患やヘルニアなど他の先天異常を合併することも多く(15〜20%)、このような場合には染色体異常の検査も必要となります。
【標準治療 】
 治療は手術しかありません(図:口唇裂・顎・口蓋裂の標準的手術時期)。口唇裂は顔面の目立つ位置に発生する異常ですので、整容上の大きなハンディキャップになります。治療法の発達していなかった頃には、上口唇に大きな傷跡が残り、このため「兎唇(みつくち)」といった差別を受けましたが、最近では治療法が進歩しておりますので比較的目立たない傷跡になります。口唇裂は生後3カ月、体重6kgくらいに成長した時期を目安に口唇形成術を行います。生後2週間以内の早期手術をすすめる病院もありますが、口の周りの筋肉などをうまく縫い合わせるには、生後3カ月くらいまで発育したほうが手術がしやすくなります。また、両側の口唇裂も1回の手術で閉鎖できます。
 口蓋裂は出血が多いので生後1歳から1歳半、体重10kgくらいに成長した時点で、上あご(口蓋)の割れ目を閉じる手術をします。口蓋裂は言語と大きく関係しますので、2歳以上と年齢が経ってから手術をすると、すでに誤ったしゃべり方を覚えているので結果が良くありません。また、誤ったしゃべり方をする口蓋裂児は4歳頃より適切な言語訓練が必要となります。口唇裂・口蓋裂には上歯ぐきの割れ目(顎裂と呼ばれます)も生じていることが多く、正常な歯の発生が得られず、歯列(歯並び)や咬合(こうごう:噛み合わせ)の異常を生じます。そのため、10歳頃より歯科矯正が行われますが、これに伴い9〜10歳頃に顎裂閉鎖のための骨移植が行われます。
【治療経過 】
 口唇裂のみの場合では、生後の哺乳は難しくありませんが、口蓋裂を合併している場合には、乳首の先が長くやわらかな口蓋裂用哺乳びんを使うのが良いでしょう。また、乳首の孔を大きく開けて赤ちゃんが吸いやすいようにしましょう。一般に赤ちゃんはお乳を吸う力が弱いので回数を分けて哺乳します。
 口唇裂の手術後、上口唇の傷跡がきれいになるには少なくとも1年はかかります。また、鼻の軟骨にも発育異常が現れますので、5〜6歳で修正手術が必要になることが多いようです。歯列矯正も含めて最終的には思春期を過ぎた15、6歳で治療が完了しますが、この間、形成外科医、矯正歯科医、言語訓練師などが1つのチームを作って総合的に治療に当たります。
【生活上の注意 】
 とくにありませんが、治療の経過途中では変形が目立つこともあり、両親・家族の精神的な支えが必要となります。口蓋裂児では言葉のしゃべり方に気をつけて、声が鼻に漏れたり(開鼻声〈かいびせい〉)、うまくしゃべれない(構音障害)時には、言語治療が必要となります。また、虫歯を作りやすいので歯磨きを指導すること、歯列異常が生じた場合には歯科矯正科を受診されることを勧めます。
【原因/発生 】
 はっきりした原因はありませんが、母体内の環境因子と遺伝因子が複雑にからみあって発生する多因子遺伝説が有力になりつつあります。母体内の環境因子としては、胎児の位置や姿勢などのほか、母親の疾患(糖尿病、風疹ウイルスなどの感染)や薬物投与(副腎皮質ホルモンなど)、放射線照射などが考えられております。遺伝因子としては両親のいずれかが罹患者の場合には、発生率が約10倍に上昇するといわれており、遺伝素因は否定できません。しかし、遺伝が直接的に発生につながるわけではなく、環境因子の影響を受けて発生するといわれるようになっております。
 口唇裂単独、口唇裂・口蓋裂、口蓋裂単独の発生頻度は口唇裂・口蓋裂が最も高く約50%を占めます。男女はほぼ同率に発生しますが、口唇裂・口蓋裂は男にやや多く発生する傾向があります。
このページの執筆医師【波利井清紀

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編集 寺下 謙三
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発売日 2006年7月
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