見出し語 全文検索 [ランダム検索]




小児科

トップ各診療科から検索小児科

チック【ちっく】
Tic

[受診科] 小児科

【概説 】
 チックは小児期ではまれな疾患ではありません。しかも多くのチックは成人するに伴い自然に治癒する傾向があります。チックとは突発的、急速、反復性、非律動的、常同的な運動あるいは発声で、発症が18歳未満で4週間以上持続するものをいいます。チックについては、かつては精神分析の視点からの解釈が盛んに行われ、対人関係や親子関係における心理的葛藤が問題視されて、心理療法精神療法が治療の主体であった時期がありました。しかし、重症のチックを発症する家系(トゥーレット症候群)があることが知られるようになったことなどから、最近ではむしろ脳の機能的障害として遺伝的側面も検討されるようになり、とくに脳内ドーパミン受容体との関連が注目されています。しかしながら、チックは本人が止めようとするとかえって増強したり、ピアノの発表会などの緊張場面で強まることがあるのは確かで、チックは心理状態に影響されやすい疾患でもあります。またチックを発症する小児の母親が神経質で過干渉という印象を与えることも少なくありません。これらのことから、現在ではチックを発症する小児とその親(とくに母親)との間には、遺伝上の気質的な共通性があるのではないかと考えられています。

【症状 】
 チックの種類は運動性チックと音声チックに分けられます。
[1]運動性チック
 顔面のチックはまばたきや、口をゆがめたり、鼻翼をピクピクした動きなどがあります。頸部では頭をねじったり、前屈、あるいは後屈させたり、1回転させるなどです。肩ではぴくっとさせたり、肩をすぼめたりします。手ではぴくっとさせる、くねらせる、手を振るなどです。体幹ではそらせたり、ねじったりします。脚では蹴る動きをしたり、スキップをしたりします。運動性チックの中で、まばたきは日常動作でみられるものであり、多少まばたきが多くても周囲の人間はとくに気にしていません。しかし、周囲の人の目にとまりやすいチックでは、本人も気にするようになります。また、手のチックなどでは、字を書くのが困難になるなど、日常生活に支障をきたすことがあります。
[2]音声チック
 音声チックでは咳払いがもっとも多く、その他単純な音声、複雑な発声、汚言(バカ、死ね、くそババア、卑猥な言葉)などがみられます。咳払いは日常よくみられるものであり、周囲の人間もとくに気にしていないことが多いのですが、甲高い奇声や汚言は、運動性チックよりも周囲の注目を集めてしまいます。そのため、本人がそのことを気にして登校を渋ったり、外出がしにくくなったりすることが問題になります。
【診断 】
 チックは一般の小児科や小児神経外来において比較的容易に診断可能です。現在はDSM-IV(米国精神医学会編集による『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第4版)の診断基準が用いられていますが、表:診断基準に示したように、この診断基準によると、チックとは18歳未満で4週間以上持続するものをいい、その種類と持続時間によって3種に分類されます。しかし実際にはチックの臨床像は一過性チック障害からトゥーレット症候群まで連続性があり、必ずしも3種に分類されません。チックの初発症状としては強いまばたきが多い傾向にあります。その他口角の動きなど顔面のチックや、頭をふる頸部のチックからはじまることが多く、チックが手からはじまることは多くありませんし、体幹、足からはじまることは極めてまれです。チックに関連した疾患の中でも、多彩な運動性チックと音声チック、および特異な性格傾向を示すトゥーレット症候群では、40%以上に注意欠陥・多動性障害(ADHD)を合併します。また学習障害を合併していることもあります。
 鑑別診断としては意識がはっきりしていて、不随意運動をきたす様々な疾患が対象となります。すなわち舞踏(ぶとう)病、突発性ジスキネジア、部分てんかんなどです。
【標準治療 】
 チックは本人、家族および周囲の人にその症状を理解してもらい、チックの症状が出てもことさら気にせず、日常生活が円滑に行えるようにすることが大切です。チックが心理的葛藤で生ずるという考え方は主流ではなくなりましたが、心理療法行動療法が行われる場合もあります。
 チックは基本的に薬物療法の対象とならない疾患ですが、しばしばの音声チック、多彩な運動性チック、あるいはその両方を認め、学校・家庭での生活が障害される場合、つまり音声チックが授業を妨げたり、本を読むことが全身性チックのために困難だったり、学校で汚言が出ることが心配で登校拒否になったりした場合は薬物療法を行います。
●標準治療例
 ・セレネース  1日0.3mgを2〜3回に分けて服用します。2週間経過をみて、日常生活に支障をきたすようなチックが残る場合は増量します。増量は0.25〜0.5mgずつ行い、3mgを限度とします。
 ・オーラップ  1日0.5〜1mgを1日1回服用します。
【予後/生活上の注意 】
 チックはほとんどは何もしなくても、多くの場合1年以内には消失します。長く続く場合でも多くは思春期後半までに消失するか、残っても軽い動きの目立たないチックになります。チックは止めようとすると緊張してかえって増強することが多いので、チックの患者さんには無理に止めるようにはいわないことが大切です。また、学校や家庭での明らかな心理的ストレスがあれば取り除き、本人を取り巻く環境に対する配慮も必要です。
このページの執筆医師【長尾芳朗

『標準治療(寺下医学事務所)』 書籍版

標準治療(寺下医学事務所)について
あなたの最適な治療法がわかる本。誰もがかかる可能性の高い代表的な疾患約570を収録、各疾患ごとに最適な治療法を具体的に解説している。また、治療を受ける上で気になる医療用語、診療科別の名医紹介、コラムなども掲載している。
『標準治療(寺下医学事務所)』 書籍版

約570の病気の情報 (症状、診断方法、標準的な治療方法、予後、生活上の注意など)を診療科目別に掲載している 「家庭の医学事典」です。


出版社 日本医療企画[外部リンク]
編集 寺下 謙三
価格 5,142
収録数 1787疾患
サイズ 21.8x15.6x6.6cm(A5判)
発売日 2006年7月
ISBN 978-4890417162
関連電子書籍

 電子書籍

私を救う医者はどこ?

私を救う医者はどこ?

  • 【著者より】病の恐れをひとり抱えている時...>>続く
iBooks GoogleBooks kindle